2011年05月06日

水月 -すいげつ-

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 やりきったのでレビュー。さほど長いゲーム、ではない。古い作品だし。F&Cらしく、非常にすばらしい良作品でした。ただ、クセとアクは非常に強い。

 良くも悪くも、非常に文学的作品。一本の物語として楽しめれば、それこそ神作と呼べる域。ただ、ゲーム・エロゲーとして考えるとかなり好みは別れる。
 またゲームタイトルにしてもそうですが、文学的な方向性、ゲームの舞台がサーカスの水夏に非常に酷似している、特に水夏第一章

 ただ、水夏をはじめ今まで自分が高評価している作品とは違う点が一つ。謎は謎のまま終わる部分が多いし、ゲーム内で説明しきっていない部分も非常に多い。基本的には、そういう表現に対して自分は否定的ですが。水月は例外で、このゲームの主題・世界観を考えるとこれでいいかなぁとも思う。うみねこでは全否定した表現方法ですが、このゲームに関してはこれもあり。


 このゲームの根本は非常に単純。ただ説明不足というか、全てのことをきっちり説明するストーリーではないので謎が謎なままなことも多々。並列世界やパラレルワード・量子力学を扱うような作品は昨今特に多いですが、ここまで見事にゲームとして一つの答えとそれを主張するものは珍しいかな。
 そういう、主題・メッセージ性というものに関して、ここまで完成された作品は類を見ないと思う。


 以下、内容に踏み込んでのネタバレビュー






 魔法というよりは、オカルト。そんなゲームの舞台です。リアリティな物語では決してないのですが、概念論とか量子力学とかそういった方向性なので、ファンタジー色は皆無。

 まず、主人公が事故から目覚めるところからのゲームスタート。そこで、主人公は記憶喪失=過去の情報を全くもっていないものとしてゲームが始まります。
 これが、このゲームの一番の重要ポイントであり根幹。このゲーム全体(メインシナリオであると思われる那波ルートでは特に感じられるが)のメッセージを伝える上で一番大切なポイント。

 要約してしまえば、過去の情報を持たない主人公は、夢・妄想・他人から聞いた曖昧な伝え聞きを否定する材料がない。確固たる過去を持たない人間にとって、目の前の普通に考えたらありえない異常な事象さえ、否定する材料がないということ。
 メインの那波ルートでは特に語られていますが。しかし、それは逆を言えばなんにでもなれるということ。自分さえ受け入れれば、夢が現実になるということ。
 観測者を持たない猫箱は、無限の可能性を持つ。シュレーディンガーの猫、最近はよく使われる言葉ですそれにしてもエロゲーは量子力学大好きだなw

 繰り返すが、文学的に非常に優れた文章。さらにこの主題、世界観と相まって非常に美しいです水月。


 以下、エロゲーらしくヒロインルートごとに個別レビュ。



○牧野那波

 おそらくメインヒロイン。主題をがっつり入れ込んだストーリー。そして、一番パラレルワールドや夢と現実(?)を行き来する内容。自分はファーストプレイで那波ルートをやったため、慣れるまでは非常に難解でした。ああ、こういう話なんだな、とわかってしまえば普通にやれますが。ちょっとファーストプレイには向かないルートかもしれませんね。

 色々な推測はたつけど、結局「ナナミ」とはなんだったのか。とか、考えるだけ無駄なのでそこは置いておくのが吉かな?情報をまとめると。

・ナナミ信仰は、過去のナナミにまつわる出来事に由来している(ただし、伝聞されているものと真実は異なる)。
・ナナミは、山ノ民の巫女に与えられる「名」であり、個人を指す「名前」ではない。よって、主人公と過去に出会ったナナミ(ママ)と牧野那波は共にナナミではあるが、同一人物ではない。

 いろいろと考察すべき点は多いですが、それは他ルートにもあるので後でまとめてって感じで。

 那波ルートとしては、うんどうだろ。雪ルートをやらないと、那波の発情の理由がイマイチつかめなくて謎のまま終わっちゃうしね。那波可愛いっちゃ可愛いし、物語の中枢の一つだから、メインヒロインっちゃメインヒロインなんだけど。ちょっと他ヒロインとは毛色が違う感じもあるね。
 どちらかと言えば、過去そして現在2度の悲恋。その先に、ある別な幸せな可能性・・・かな?物語が物語なだけにそれを受け入れはするけど、やっぱり現実(とこのゲームで言っていいのかは微妙だが)で幸せにならないハッピーエンドは、ちょっとん〜って感じはありますね。



○宮代花梨

 可愛いよ、花梨可愛いよ。最強だよこの幼馴染。幼馴染との、甘酸っぱいラブラブ物語。ちょっとナナミ信仰が入って来て、終盤旗色が変わるけど全体的にはそんな感じ。
 難解なルートが多いので、単純というか比較的エロゲーエロゲーしてていい感じです。花梨超可愛いし・・・



○新城和泉

 クラスメイトとのラブイチャ?普通にエロゲーしてるルートその2。なんだけど、ちょっと弱い気もする。花梨と和泉ルート以外は、オカルト全面なルートだから、この二人だけ少し毛色が違うんだけど。普通の恋愛ルートならそれでもいいが、もうちょっと色々あってもいいかな〜って。
 過去の約束にしても、彼女の家のことにしても。もうちょっと色々あってもいいんじゃない?という感じでわりと何事もなく平和にくっついて終わっちゃった気がしますです、はい。
 新城親父が予想以上にストーリーに関わってこなかったのがちょっと残念w


○琴乃宮 雪

 難解ルート、その2。那波ルートに酷似しているといえば、そう。那波ルートやってないともうわけがわからないかもしれない。
 メイドさん可愛いけどね・・・。うん。結局この子の詳細についても、わからないまま終わっちゃったなぁって気はします・・・。



○香坂 アリス&マリア

 アリス可愛過ぎるだろう、常識的に考えて。個別と両方EDで3本ありますが、話はまぁほとんど一緒。
 東洋オカルトできて、いきなり西洋魔女はいったかと思ったけどそっちにあんまり話は膨らまなかったね。ナナミ信仰とかとはあまり関わらないルートだったし。攻略可能条件もあるので、まぁ追加ヒロインってとこでしょうか?
 可愛いけど、ちとロリ。でも可愛い。


○大和 鈴蘭

 ガチロリです、シナリオもあってないようなもん。完全におまけヒロインですが・・・必要か?アリス&マリアと鈴蘭が花梨か和泉クリア攻略後可能なので、後半は完全にロリゲーと化してしまいます。



 個人的には、アリス&マリア・鈴蘭のルート潰して他4ヒロインの話もうすこし掘り下げてほしかったかなぁってのが正直なところ。アリスは可愛いけどね。西洋魔女にしても、そこまで深く掘り下げてるわけではないので、ならナナミ一本でそっちの説明とか解説に費やしてくれた方がやってる側としてはいいんじゃないかな〜と。



○総評

 ナナミ信仰関係(前半4ヒロイン)に関しては、非常に文学的にも美しく、題材もオカルトながら理を通しているし、物語として完成されている。
 キャラも非常に可愛いらしく美しく描かれているし、文句のつけどころが個人的にはない。ただ内容が内容だけに、読み物としては難解だし謎が謎なまま終わることが多い。それを含めて完成された世界観だと素直に褒め称えられるので、決してマイナスポイントではないが。
 という感じですかね。一言で言えば、本当に美しい物語でした。



 と、まぁゲームとしてはベタ褒めで終わりなんですが。それだけだとちと面白くないので、以下水月の謎について色々考えてみる。





○考察


・那波の豹変と存在
 まず、発情については雪ルートで説明されているが山ノ民の発情と考えていいと思う。「旦那様」あたりのくだりは、夢というか前世というかの記憶によるものだろう。
 那波という子の存在は、言わば「時間・次元を超えて一つ」と考えるのがいいかもしれない。那波=ナナミだし。

・主人公の親父と雪
 結局、何がしたい人なのかは謎なまま。そしてどこまでつかんでいたのかも。雪=山ノ民の生き残り。なのはいいんだが、結局なんで雪の両親が死んだのかは謎なままっす。
 雪という存在についても、アリス達のルートだと普通にいなくなってるし。他ヒロインED後、彼女がどうしてるかってのも謎。そもそも、「本当に存在した」のか。存在する世界と存在しない世界は並列世界としてあるんだろうけど。仮に、一番最初に目覚めた世界を「現実」と定義するならば、いきなり他ヒロインルートで別の世界に飛ぶってのも、ちと突拍子がない気がする。
 そしてなにより、結局親父の机の引き出しには何が?鍵は・・・とか言うだけ言って、結局いじってないよねそこw

・那波の親父
 一番謎な人物。目的は、彼の母親をマヨイガで彼女の娘(那波)に入れること?かなまぁ普通に見たらただのキチガイやろうなんですが。
 花梨の舞の失敗とか、防空壕で死体漁ってたこととか。あのあたり全く説明がないので、まぁキチガイの儀式のためだろうな〜って推測はできますが。
 主人公の親父とコイツが、おそらく物語の根幹であるナナミ信仰や山ノ民って部分を一番良くしってるはずなんだが。両方、特に語らず。

・主人公の存在
 まず、何者なんだろうね。ナナミ信仰の根幹である、一番古い記憶はやはり前世?目覚めたとき持ってた、涙石はまぁママであるナナミから貰ったものかな?と後々推測できるけど。なぜマヨイガの写真なんて持ってたん?事故直前、彼と彼の父親がなにをしてたのかとか完全に不明なので。雪ルートでは、事故以前に山ノ民や雪の存在についてそれなりにつかんでいたと思われる節があるし。ある意味一番謎な人物。

・山ノ民
 ってのがなにものなのか、どういう歴史をたどったのかというのはゲーム中にある程度あるからいいんだけど。
 ポイントになってくるのは、雪の両親の死と雪。防空壕での虐殺。山ノ民の集落と思われる廃村。だと思う。
 時系列的に、山ノ民の虐殺や迫害があったのは戦時中。この物語が、戦後すぐの物語ならおそらくなんの問題もない。
 が、まぁ現代風だし。と考えると、近年にも再度山ノ民を虐殺迫害するような事例があったということか?
 雪の年齢を考えると、15年前くらい。主人公が迷い込んだ時点で既に廃村だった山ノ民の集落。防空壕での、虐殺。雪の両親の墓の場所。
 繋がるようで繋がらない。宮代神社と大和神社とか、そのあたりも伏線張ってるけど回収してねぇし!!!
 推測できるのは、10年以上前に山ノ民をおそらく全滅させるような虐殺迫害があった(新城の開発も関わってるか?)→那波親父が那波を。主人公親父が雪を保護。・・・てな感じかなぁ?そのあたり新城とかも関わってそうだけど。一切説明はないから所詮は推測です。


 主人公、主人公の父親、雪、雪の両親、那波とナナミと山ノ民。そして那波の親父、このあたりの人物(特に事故以前)の状況、関係性、正体といったものがほとんど謎のまま終わってしまう。読み物としてこの部分掘り下げるだけでも相当面白くなりそうなだけに、ちょっと残念かな。主題である現実と夢と平行世界みたいなものからは外れるからかもしれないけどね。




 結局なんだったの?と問われると色々と説明に困ることが多々ある。製作サイドとしてどの程度のディテールまで作りこんでたのか微妙。本気でネタバレ設定資料とか読んでみたいっすね・・・これは。伏線の回収しなささは、割とガチw
posted by シュレディンガーの猫 at 18:03| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム(美少女・R18) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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